位相空間上の層

位相空間上の層 #

図形などの数学的対象について調べるときに、全体の性質を一気に把握することが難しい場面で、 局所的な情報をまず調べ、それらをつなぎ合わせて全体の性質を知る という操作を行う場面が多いと思う。 層(sheaf) はこのような操作ができる数学対象を抽象化した概念であり、元々は位相空間上の数学対象を扱う手段として誕生し、後に圏論的に一般化されたものである。 本章では、まず位相空間上の層について解説し、続く章で圏論的な一般化を行う。

位相空間 $X$ 上の前層・層 $F$ とは各開集合 $U\in\mathcal{O}_X$ に集合 $F(U)$ を紐づけるものであり、特定の条件を満たすものである。例えば $X$ を地球表面とした時 $F$ は地球表面上の領域 $U$ に対して何らかの数学的対象 $F(U)$ を紐づけるものである。例えば地球表面上の温度分布に関心があるならば $F(U)$ は二次元の連続関数の集合について考えるといった事である。

$F$ は特定の状況を与えるものではなく、数学の舞台を設定するものである。温度分布の例で言うならば、$F(U)$ はあらゆる状況の集合であって元$s\in F(U)$ が特定の状況を表す。この元 $s$ のことを 切断(section) と言う。

そして、上で述べたことを実現する為、前層 $F$ は、数学的対象 $F(U)$ の注目する範囲 $U$ を狭めていく操作を備えており、層 $F$ は更に $F(U)$ らを貼り合わせてより大きな範囲に対する数学対象を得る操作を備えている。

前層 #

位相空間 $X$ 上の前層 $F$ は 注目する範囲を狭める操作 を備えている。すなわち、$U\supseteq V$ の時に、$F(U)$ から $F(V)$ を作る 制限写像(restriction map) と呼ばれる写像 $\rho^U_V$ を備えており、これが範囲を狭める操作について整合的であるものである。

定義4.1: 位相空間上の前層

位相空間$X$ 上の前層 $F$ とは、各開集合 $U\in\mathcal{O}_X$ に集合 $F(U)$ を対応させるものであり、 任意の $U\supseteq V\ (U,V\in\mathcal{O}_X)$ に対して以下の条件を満たす 制限写像(restriction map) $$ \rho^U_V: F(U)\rightarrow F(V) $$ を備えるものである。

  1. $\rho^U_U$ は恒等写像である。
  2. $U\supseteq V\supseteq W$ のとき、 $\rho^U_W = \rho^V_W\circ\rho^U_V$

$F(U)$ の元を 切断(section) と呼ぶ。$s \in F(U)$ の時 $\rho^U_V(s)$ の代わりに $s|_V$ と書くこともある。

この定義は $X$ の開集合系 $\mathcal{O}_X$ を包含関係 $\subseteq$ によって圏とみなした時 $F$ 及び $\rho$ が$\mathcal{O}_X^{\mathrm{op}}$ から $\mathbf{Set}$ への関手であるといっている事に他ならず、圏論的な前層の定義と一致する。この時 $F(U\supseteq V) = \rho^U_V$ である。

#

前層のうち、局所的な数学対象を貼り合わせて大域的な数学対象を矛盾なく構成できるものを層という。

定義4.2: 位相空間上の層(切断利用)

位相空間 $X$ 上の前層 $F$ で以下の条件(貼り合わせの公理)を満たすものを 層(sheaf) という。

  1. $X$ の任意の開集合 $U$ と、その開被覆 $U=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda}$、切断 $s,t\in F(U)$ について、全ての $\lambda\in \Lambda$ で $s|_{U_{\lambda}} = t|_{U_{\lambda}}$ であるならば $s = t$ である。

  2. $X$ の任意の開集合 $U$ と、その開被覆 $U=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda}$、切断の族 $s_{\lambda}\in F(U_{\lambda})$ について、任意の $\alpha,\beta\in\Lambda$ で $s_{\alpha}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}} = s_{\beta}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}$ であるならば、ある切断 $s\in F(U)$ が存在し全ての $\lambda\in\Lambda$ に対して $s|_{U_{\lambda}} = s_{\lambda}$

1つめの条件は $F(U)$ の切断はその局所的な情報のみから一意に定まるということをいっている。2つめの条件は重なる部分で一致する切断は貼り合わせて一つの大きな切断にする事が出来るということをいっている。

層の具体例は様々あり

  • 位相空間上の実数値連続関数
  • 代数多様体上の正則関数
  • 微分可能多様体上の微分可能関数

などである。

層の圏論的定義 #

簡単なケースとして 開被覆$U=U_1\cup U_2$ の場合を考えると、 $F$ が層であるならば重なる部分で一致する $s_1,s_2$ の組とそれを貼り合わせた $s\in F(U)$ が一対一に対応している。すなわち、

$$F(U) \cong \{(s_1, s_2) \in F(U_1)\times F(U_2) \mid \rho^{U_1}_{U_1\cap U_2}(s_1) = \rho^{U_2}_{U_1\cap U_2}(s_2)\}$$

であり、 $s|_{U_1}=s_1$ 及び $s|_{U_2}=s_2$ を満たす射影 $\rho^U_{U_1}: F(U)\rightarrow F(U_1)$ 及び $\rho^U_{U_2}: F(U)\rightarrow F(U_2)$ が備わっているということなので、これは $\mathbf{Set}$ においてはイコライザを用いて

$$ F(U) \cong \mathrm{eq}\left(\rho^{U_1}_{U_1\cap U_2}, \rho^{U_2}_{U_1\cap U_2}\right)$$

と書くことができる。より一般には任意の開被覆 $U=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda}$ に対して、全ての共通部分で一致する切断の族 $\{s_{\lambda}\}$ とそれらを貼り合わせた $s\in F(U)$ が一対一に対応すると言う事である。この定義では切断 $s\in F(U)$ を明示的に使わないので、後に位相空間以外にも一般化する事が出来る。

定義4.3: 位相空間上の層(イコライザ利用)

位相空間 $X$ 上の前層 $F$ が以下の条件を満たすときこれを 層(sheaf) という。

$X$ の任意の開集合 $U$ と、その開被覆 $U=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda}$について $$ F(U) \cong \mathrm{eq}\left(\prod_{\lambda\in\Lambda}F(U_{\lambda})\overset{p}{\underset{q}{\rightrightarrows}}\prod_{\alpha,\beta\in\Lambda}F(U_{\alpha}\cap U_{\beta})\right)$$ が成り立つ。但し $p$ は $\rho^{U_{\alpha}}_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}$ を束ねたもの、 $q$ は$\rho^{U_{\beta}}_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}$ を束ねたもの。

同値性の証明

位相空間上の層の切断を用いた定義を①、イコライザを用いた定義を②とする。

(①$\Rightarrow$ ②)

位相空間 $X$ 上の前層 $F$ が定義①を満たすとする。開被覆 $U=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda}$ に対して $$e(s) = \{s|_{U_{\lambda}}\}_{\lambda\in\Lambda},\quad p(\{s_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}) = \{s_{\alpha}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}\}_{\alpha,\beta\in\Lambda},\quad q(\{s_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}) = \{s_{\beta}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}\}_{\alpha,\beta\in\Lambda}$$ とおくと、$F$ が前層であることより下の図式は可換である。

$$\xymatrix{ F(U) \ar[r]^-e & \displaystyle\prod_{\lambda\in\Lambda}F(U_{\lambda}) \ar@<+2pt>[r]^-{p} \ar@<-2pt>[r]_-{q} &\displaystyle\prod_{\alpha,\beta\in\Lambda}F(U_{\alpha}\cap U_{\beta}) }$$

ある集合 $A$ 及び関数 $f: x\mapsto \{f_{\lambda}(x)\}_{\lambda\in\Lambda}$ が以下を可換にするとする。

$$\xymatrix{ A \ar[r]^-f & \displaystyle\prod_{\lambda\in\Lambda}F(U_{\lambda}) \ar@<+2pt>[r]^-{p} \ar@<-2pt>[r]_-{q} &\displaystyle\prod_{\alpha,\beta\in\Lambda}F(U_{\alpha}\cap U_{\beta}) }$$

すると各 $x\in A$ に対して $f_{\alpha}(x)|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}=f_{\beta}(x)|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}} \quad (\alpha,\beta\in\Lambda)$ であるので、定義①の条件2よりある $s\in F(U)$ が存在して $s|_{U_{\lambda}} = f_{\lambda}(x)\quad (\lambda\in\Lambda)$ となる。また条件1よりこれを満たす $s$ は一意である。

従って任意の $A,f$ に対して、以下の図式が可換となるような $u: A\ni x \mapsto s\in F(U)$ が一意に存在するので、これはイコライザの定義を満たし $F(U)\cong\mathrm{eq}(p, q)$ である。 $$\xymatrix{ A \ar@{.>}[d]^-{\exists! u} \ar[rd]^{f} & & \\ F(U) \ar[r]^-e & \displaystyle\prod_{\lambda\in\Lambda}F(U_{\lambda}) \ar@<+2pt>[r]^-{p} \ar@<-2pt>[r]_-{q} &\displaystyle\prod_{\alpha,\beta\in\Lambda}F(U_{\alpha}\cap U_{\beta}) }$$

(②$\Rightarrow$ ①)

位相空間 $X$ 上の前層 $F$ が定義②を満たすとする。開被覆 $U=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda}$、切断 $s,t\in F(U)$ について、全ての $\lambda\in\Lambda$ で $s|_{U_{\lambda}} = t|_{U_{\lambda}}$ であるとする。すると、以下の図式は $u=s$ としても $u=t$ としても可換となるが、 $u$ の一意性より $s=t$ である。従って定義①の条件1が示された。

$$\xymatrix{ 1 \ar[d]^-u \ar[rd]^{\{s|_{U_{\lambda}}\}} & & \\ F(U) \ar[r]^-e & \displaystyle\prod_{\lambda\in\Lambda}F(U_{\lambda}) \ar@<+2pt>[r]^-{p} \ar@<-2pt>[r]_-{q} &\displaystyle\prod_{\alpha,\beta\in\Lambda}F(U_{\alpha}\cap U_{\beta}) }$$

そして、切断の族 $s_{\lambda}\in F(U_{\lambda})$ について、任意の $\alpha,\beta\in\Lambda$ で $s_{\alpha}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}} = s_{\beta}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}$ であるならば、以下の図式が可換となる $s\in F(U)$ が存在し、この時 $s|_{U_{\lambda}} = s_{\lambda}$ となる。従って定義①の条件2も示された。

$$\xymatrix{ 1 \ar[d]^-s \ar[rd]^{\{s_{\lambda}\}} & & \\ F(U) \ar[r]^-e & \displaystyle\prod_{\lambda\in\Lambda}F(U_{\lambda}) \ar@<+2pt>[r]^-{p} \ar@<-2pt>[r]_-{q} &\displaystyle\prod_{\alpha,\beta\in\Lambda}F(U_{\alpha}\cap U_{\beta}) }$$

$\square$

この定義は切断を用いた定義の素直な翻訳であるが、より抽象度の高い定義として関手の連続性を用いた以下のような定義も可能である。

定義4.4: 位相空間上の層(連続性利用)

位相空間 $X$ 上の前層 $F$ が 層(sheaf) であるとは、 $\mathcal{O}_X^{\mathrm{op}}$ の 余完備充満部分圏(cocomplete full subcategory) $J$ に対して以下が成立することである。 $$ F\left(\varprojlim_{U_{\lambda}\in J}U_{\lambda}\right) \cong \varprojlim_{U_{\lambda}\in J}F(U_{\lambda})$$

この定義の状況を図示すると以下の様になる。 $J$ が余完備であるというのは任意の $U_{\alpha},U_{\beta}\in J$ に対して $U_{\alpha}\cap U_{\beta} \in J$ ということで、充満であるというのは開集合の間の包含関係を漏らさず $J$ に持ってきているということである。そして $$\varprojlim_{U_{\lambda}\in J}U_{\lambda} = \bigcup_{U_{\lambda}\in J}U_{\lambda}$$ であるので、上記の定義は位相空間 $X$ 上での領域の貼り合わせと、対応する数学的対象 $\{F(U_{\lambda})\}$ の貼り合わせが整合的であるという事を言っており、直感的にも理解しやすい定義となっている。

同値性の証明

位相空間上の層の切断を用いた定義を①、連続性を用いた定義を③とする。

(①$\Rightarrow$ ③)

位相空間 $X$ 上の前層 $F$ が定義①を満たすとする。$\mathcal{O}^{\mathrm{op}}_X$ の余完備充満部分圏 $J$ に対して

$$U = \varprojlim_{U_{\lambda}\in J}U_{\lambda} = \bigcup_{U_{\lambda}\in J}U_{\lambda}$$

とおくと$\{U_{\lambda}\}$ は $U\in\mathcal{O}^{\mathrm{op}}_X$ の開被覆になっている。まず、任意の$J$ の対象 $U_{\alpha}\supseteq U_{\beta}$ に対して $F$ が前層であることより以下は可換。

$$\xymatrix{ F(U) \ar[d]_{\rho^U_{U_{\alpha}}} \ar[rd]^{\rho^U_{U_{\beta}}} & \\ F(U_{\alpha}) \ar[r]_{\rho^{U_{\alpha}}_{U_{\beta}}} & F(U_{\beta}) }$$

ここで、任意の$J$ の対象 $U_{\alpha}\supseteq U_{\beta}$ に対して以下が可換となるような $A$ と $\{f_{U_{\lambda}}\}$ が存在したと仮定する。

$$\xymatrix{ A \ar[d]_{f_{U_{\alpha}}} \ar[rd]^{f_{U_{\beta}}} & \\ F(U_{\alpha}) \ar[r]_{\rho^{U_{\alpha}}_{U_{\beta}}} & F(U_{\beta}) }$$

任意の $x\in A$ に対して $s_{\lambda} = f_{U_{\lambda}}(x)$ とおくと、任意の $J$ の対象 $U_{\alpha},U_{\beta}$ に対して、 $J$ が余完備であることから $U_{\alpha}\cap U_{\beta}$ が存在し、以下の図式が共に可換となるから $$ s_{\alpha}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}} = s_{\beta}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}} = f_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}(x)$$

$$\xymatrix{ A \ar[d]_{f_{U_{\alpha}}} \ar[rd]^{f_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}} & & A \ar[d]_{f_{U_{\beta}}} \ar[rd]^{f_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}} & \\ F(U_{\alpha}) \ar[r] & F(U_{\alpha}\cap U_{\beta}) & F(U_{\beta}) \ar[r] & F(U_{\alpha}\cap U_{\beta}) }$$

従って定義①の条件2より $s\in F(U)$ が存在して $s|_{U_{\lambda}} = s_{\lambda}$ となる。この対応 $x\mapsto s$ を $u$ とすると以下の図式が可換となり、条件1よりこのような $u$ は唯一つに定まる。従って $F(U) \cong \varprojlim_{U_{\lambda}\in J}F(U_{\lambda})$ である。

$$\xymatrix{ A \ar[d] \ar[rd] \ar@{.>}[r]^{\exists! u} & F(U) \ar[ld] \ar[d]\\ F(U_{\alpha}) \ar[r] & F(U_{\beta}) }$$

(③$\Rightarrow$ ①)

位相空間 $X$ 上の前層 $F$ が定義③を満たすとする。任意の開集合 $U\in\mathcal{O}^{\mathrm{op}}_X$ と開被覆 $U=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda}$ に対して、いずれかの $U_{\lambda}$ に含まれる開集合全てを対象とする $\mathcal{O}^{\mathrm{op}}_X$ の充満部分圏を $J$ とする。混同を避ける為 $J$ の対象を $V_{\lambda}$ と表記する。$J$ が余完備である事は簡単にわかり

$$ F\left(\varprojlim_{V_{\lambda}\in J}V_{\lambda}\right) \cong \varprojlim_{V_{\lambda}\in J}F(V_{\lambda})$$

である。ここで、切断 $s,t\in F(U)$ について、全ての $\lambda\in\Lambda$ で $s|_{U_{\lambda}} = t|_{U_{\lambda}}$ であるとすると、 $F$ が前層であることにより任意の $V\in J$ に対して $s|_V = t|_V$ である。任意の $J$ の対象 $V_{\alpha}\supseteq V_{\beta}$ に対して、 以下は可換であるからこれは $1$ を頂点とする錐。

$$\xymatrix{ 1 \ar[d]_{s|_{V_{\alpha}}} \ar[rd]^-{s|_{V_{\beta}}} & \\ F(V_{\alpha}) \ar[r] & F(V_{\beta}) }$$

従って、任意の $V\in J$ について以下が可換となるような $u$ が一意に存在するが、これは $u=s$ としても $u=t$ としても可換。従って $s=t$ であるので定義①の条件1が示された。 $$\xymatrix{ 1 \ar[d]_{s|_V} \ar@{.>}[r]^-{\exists u} & F(U) \ar[ld]^{\rho^U_V} \\ F(V) & }$$

続いて、切断の族 $\{s_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ について、任意の $\alpha,\beta\in\Lambda$ で $s_{\alpha}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}} = s_{\beta}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}$ であるとする。ここで各 $V\in J$ について $V\subseteq U_{\lambda}$ となる $U_{\lambda}$ を用いて $ t_V = s_{\lambda}|_V$ となる族 $\{t_V\}_{V\in J}$ を定める。 ここで $V\subseteq U_{\alpha}$ かつ $V\subseteq U_{\beta}$ の時には $V\subseteq U_{\alpha}\cap U_{\beta}$ であるので $$ s_{\alpha}|_V = s_{\beta}|_V $$ であるから $t_V$ は $\lambda$ の選び方によらず well-defined である。この時、任意の $V_{\alpha}\supseteq V_{\beta}$ に対して以下が可換となるので、

$$\xymatrix{ 1 \ar[d]_{t_{V_{\alpha}}} \ar[rd]^-{t_{V_{\beta}}} & \\ F(V_{\alpha}) \ar[r] & F(V_{\beta}) }$$

任意の $V\in J$ に対して、以下が可換となる $s \in F(U)$ がただ一つ存在する。そして、全ての $\lambda\in\Lambda$ に対して $$ s|_{U_{\lambda}} = \rho^U_{U_{\lambda}}(s) = t_{U_{\lambda}} = s_{\lambda}|_{U_{\lambda}} = s_{\lambda}$$ であるから定義①の条件2も示された。

$$\xymatrix{ 1 \ar[d]_{t_V} \ar@{.>}[r]^-{\exists s} & F(U) \ar[ld]^{\rho^U_V} \\ F(V) & }$$

$\square$

エタールバンドル #

バンドルの断面の層 #

定義4.5: バンドルの断面

位相空間 $E, X$ に対して連続写像 $p: E\rightarrow X$ を$X$ 上の 束,バンドル(bundle) という。 この時 $E$ を 全空間(total space)、 $X$ を 底空間(base space) という。

底空間 $X$ の任意の開集合 $U$ と、バンドル $p: E\rightarrow X$ に対して、 $p\circ s: U\rightarrow X$ が包含写像となるような 連続写像 $s: U\rightarrow E$ を $U$ 上の $p$ の 断面(cross section) という。

例えば全空間を$xy$平面($\mathbb{R}^2$), 底空間を$x$軸($\mathbb{R}$)として、バンドル $p(x, y) = x$ について考える。(位相はユークリッド空間としての通常の位相とする。)

$p$ に対する開集合 $U\subseteq\mathbb{R}$上の 断面 $s$ とはどのようなものであるかというと、 $ s(x) = (f(x), g(x)) $ なる連続関数であって、 $ p(s(x)) = x $ を満たすものであるから $f(x)=x$ であれば良くて、 $s(x) = (x, g(x))$ と表される。 すなわち、この場合の $U$ 上の断面とは $U$ 上で定義された連続関数 $y=g(x)$ のことである。

同様に全空間を $xy$ 平面から原点を除いた空間とし、同じく $p$ をバンドルとすると $U$ 上の断面は $U$ 上で定義された連続関数 $y=g(x)$ で $g(0)\neq 0$ を満たすもの事である。 $g(0)\neq 0$ を満たす為、これらの断面をつなぎ合わせてより大きな断面を作る操作が矛盾なくできることがわかる。

バンドルの断面の集合は自動的に層となる。上の二つの例でも $\mathbb{R}$ 上で定義された連続関数の集合や、 原点で $0$ にならない連続関数の集合がいずれも層の条件を満たす事が分かると思う。

定義4.6: バンドルの断面の層

バンドル $p: E\rightarrow X$ が与えられた時、開集合 $U\subseteq \mathcal{O}_X$ に $U$ 上の断面の集合 $\Gamma_{p}(U)$ を対応させ、 $V\subseteq U$ に制限写像 $\rho^U_V: \Gamma_{p}(U)\rightarrow\Gamma_{p}(V)$ を対応させる対応関係は関手

$$ \Gamma_{p}: \mathcal{O}^{\mathrm{op}}_X \rightarrow \mathbf{Set} $$

になり、これは$X$ 上の層である。

証明

制限写像の性質から関手であることは明らかなので、層である事を示す。

$X$ の任意の開集合 $U$ とその開被覆 $U=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda}$、切断(断面) $s,t\in\Gamma_{p}(U)$ について、 全ての $\lambda\in \Lambda$ で $s|_{U_{\lambda}} = t|_{U_{\lambda}}$ であるとする。

断面の定義より $s,t$ は連続写像 $U\rightarrow E$である。ここで任意の $x\in U$ について、 $x\in U_{\lambda}$ となる $\lambda$ が存在し、この時 $$ s(x) = s|_{U_{\lambda}}(x) = t|_{U_{\lambda}}(x) = t(x)$$ となる。よって全ての $x\in U$ で値が等しいので $s=t$ である。

続いて、$X$ の任意の開集合 $U$ と、その開被覆 $U=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda}$、切断(断面)の族 $s_{\lambda}\in \Gamma_{p}(U_{\lambda})$ について、任意の $\alpha,\beta\in\Lambda$ で $s_{\alpha}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}} = s_{\beta}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}}$ であるとする。

この時、写像 $s:U\rightarrow E$ を$x\in U$ に対して $x\in U_{\lambda}$ となる $\lambda$ を用いて $s(x) = s_{\lambda}(x)$ と定める。 重なる部分で $s_{\lambda}$ の値は等しいので、これはwell-definedである。 また、各点 $x\in U$ の十分小さな開近傍では $s$ はいずれかの $s_{\lambda}$ と一致し、 $s_{\lambda}$ は連続写像であるから、 $s$ も連続写像である。 そして、各点 $x\in U$ である $\lambda$ について $$ p(s(x)) = p(s_{\lambda}(x)) = x \quad (x \in U_{\lambda})$$ となるので $p\circ s$ は包含写像 $U\rightarrow X$となる。したがって $s\in\Gamma_{p}(U)$ である。

$\square$

前層の芽のバンドル #

バンドル$p:E\rightarrow X$ の断面の層は、各切断 $s\in\Gamma_{p}(U)$ が具体的な連続写像 $s:U\rightarrow E$ であり、非常に扱いやすい。 一方で、一般的な位相空間 $X$ 上の前層 $F$ はもっと抽象的なものであり直接は扱いにくいが、 $F$ の情報を元にして エタールバンドル(étale bundle) というバンドルを構成する事ができ、同様の議論が可能になる。

前層 $F$ の切断をある点 $x$ における局所的な振る舞いで分類するという事を考える。この同値類を $F$ の $x$ における 芽(germ) といい、 芽の集合を 茎(stalk) という。すなわち、前層 $F$ の $x$ 上の茎とは、 $F$ の $x$ における局所的な情報を集めた集合である。

定義4.7: 前層の芽と茎

位相空間 $X$ 上の前層 $F:\mathcal{O}_X^{\mathrm{op}}\rightarrow\mathbf{Set}$ の点 $x\in X$ 上の二つの切断、すなわち、 $$s\in F(U), t\in F(V)\quad (x\in U,x\in V,U\in\mathcal{O}_X,V\in\mathcal{O}_X)$$ が $x$ の開近傍で一致する時、すなわち、ある開集合 $W\subseteq U\cap V$ が存在して $s|_W=t|_W$ となるとき、 $s$ と $t$ は $x$で同じ芽を持つ といい $s\sim_x t$ と書く。

$s\sim_x t$ は同値関係であり、この関係による同値類を $F$の$x$上の芽(germ) という。 切断 $s$ を代表元とする芽を $\mathrm{germ}_x(s)$ や $s_x$ と書く。

また、$x$上の $F$ の芽すべての集合

$$ F_x = \{ s_x \mid U\in\mathcal{O}_X, s\in F(U), x\in U\} $$

$F$の$x$上の茎(stalk) という。

命題4.8

位相空間 $X$ 上の任意の $F$ と、任意の点 $x\in X$ について、 $$ F_x = \varinjlim_{x\in U}F(U) $$ ここで添字圏は $x$の開近傍全てに $\mathcal{O}_X^{\mathrm{op}}$ と同じ射を入れた圏である。

証明は簡単なので割愛する。層の貼り合わせの公理は、芽を用いて以下のように表現し直す事が出来る。

命題4.9

位相空間 $X$ 上の前層 $F$ が層である事と、以下を満たす事は同値。

  1. $X$ の任意の開集合 $U$、切断 $s,t\in F(U)$ について、全ての $x\in U$ で $s_x = t_x$ であるならば $s=t$ である。

  2. $X$ の任意の開集合 $U$ と、その開被覆 $U=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda}$、切断の族 $s_{\lambda}\in F(U_{\lambda})$ について、任意の $\alpha,\beta\in\Lambda, x\in U_{\alpha}\cap U_{\beta}$ で $(s_{\alpha})_x = (s_{\beta})_x$ であるならば、ある切断 $s\in F(U)$ が存在し全ての $\lambda\in\Lambda, x\in U_{\lambda}$ に対して $s_x = (s_{\lambda})_x$

茎 $F_x$ には $F$ の $x$ における局所的な情報が詰まっているので、これを $x\in X$ に渡って集める事で $F$ 全体の情報をもつ位相空間およびバンドルを構成する事ができる。

定義4.10: 前層の芽のバンドル

位相空間 $X$ 上の前層 $F$ の茎 $F_x\ (x\in X)$ の直和 $$ E_F = \coprod_{x\in X}F_x = \{s_x \mid x\in X, s_x\in F_x \} $$ に、開集合 $U\in\mathcal{O}_X$ と切断 $s\in F(U)$ から定まる集合 $ s(U) = \{ s_x \mid x\in U \}$ の族 $ \{ s(U) \mid U\in\mathcal{O}_X, s\in F(U) \} $ を開基とする位相を入れた位相空間について、 $E_F$ から $X$ への射影

$$ \Lambda_F: E_F\ni s_x\mapsto x\in X $$

は連続写像となる。これを 前層$F$ の芽のバンドル(bundle of germs) という。

連続性の証明

任意の開集合 $U\in\mathcal{O}_X$ に対して $\Lambda_F^{-1}(U)$ は $x\in U$ の上の芽全ての集合であるので $$ \Lambda_F^{-1}(U) = \bigcup_{V\subseteq U, s\in F(V)} s(V) $$ と表せる。これは $E_F$ の開基の元の合併であるから開集合であるので $\Lambda_F$ は連続。 $\square$

エタールバンドル #

さて、 芽のバンドル $\Lambda_F$ が $F$ 全体の情報をもつバンドルである、という事を述べたが具体的にどのような性質を持つのか調べていく。

定義4.11: エタールバンドル

バンドル $p: E\rightarrow X$ が エタール(étale) もしくは エタールバンドル(étale bundle) であるとは、 これが 局所同相写像(local homeomorphism) すなわち、 任意の点 $x\in E$ に対してある開近傍 $V$ が存在して $$ p|_{V}: V\rightarrow p(V) $$ が同相写像となることである。

局所同相だが同相ではないエタールバンドルの例は $$ p: \mathbb{R}\ni \theta \mapsto (\cos\theta,\sin\theta) \in S^1 $$ などである。写像全体としては、例えば $\theta=0,2p$ が同じ点に潰れるので同相ではないが、局所的に見れば線分と円弧であって同相である。

ここで、次の事が言える。すなわち、 $E_F$ は単に位相空間であるだけでなく、$X$ と局所同相なのである。 これにより抽象的な前層 $F$ から具体的な幾何学的考察を行いやすい空間を構成することができた。

命題4.12

前層 $F$ の芽のバンドル $\Lambda_F:E_F\rightarrow X$ はエタールである。

証明

$E_F$ の任意の開基の元 $s(U)$ について $\Lambda_F|_{s(U)}: s(U)\rightarrow U\quad(\because\Lambda_F(s(U))=U)$ が同相写像であることを示せば十分である。

$s$ が固定されているので、 $\Lambda_F|_{s(U)}(s_x)=x$ の全単射性は明らかである。 また、$\Lambda_F$ が連続写像であるので、その制限である $\Lambda_F|_{s(U)}$ も連続である。 よって、$\left(\Lambda_F|_{s(U)}\right)^{-1}$ の連続性を示せば良い。

任意の開集合 $W\subseteq s(U)$ について $\left(\left(\Lambda_F|_{s(U)}\right)^{-1}\right)^{-1}(W) = \Lambda_F|_{s(U)}(W)$ が開集合である事を示せば良い。ここで $s(U)$ の定義からある $X$ の開集合 $V\subseteq U$ が存在して $W=s(V)$ と表される事が分かるので $$\Lambda_F|_{s(U)}(W) = \Lambda_F|_{s(U)}(s(V)) = \Lambda_F(s(V)) = V$$ である。よって$\left(\left(\Lambda_F|_{s(U)}\right)^{-1}\right)^{-1}(W)$ は $X$ の開集合なので $\left(\Lambda_F|_{s(U)}\right)^{-1}$ は連続。 $\square$

簡単な例で前層からエタールバンドルを実際に構成してみよう。 前層 $ F:\mathcal{O}_{X}^{\mathrm{op}}\rightarrow\mathbf{Set}$ として、任意の開集合 $U$ に対して

  • $F(U) = \{0, 1\} $
  • 制限写像は恒等写像

というものを考える。このように前層の取る値が常に固定の集合である前層を 定数前層(constant presheaf) という。 この $F$ は前層であるが層ではない。何故ならば、二つの交わらない開集合 $U,V, U\cap V=\emptyset$ を取ったときに、 切断 $0 \in F(U)$ と切断 $1\in F(V)$ は重なる部分(空集合)で一致するが、これらを貼り合わせた $F(U\cup V)$ を矛盾なく構成することはできないからである。

この時、任意の $x\in X$ 上の芽は $0$ か $1$ であり、 $x$ 上の茎は $\{0, 1\}$ である。そして

$$ E_F = \{s_x \mid x\in X, r\in\{0, 1\}\} $$

となるので、 $E_F$ は各点で $0$ や $1$ を取るような空間であり、値を忘れる射影 $\Lambda_F:E_F\rightarrow X$ がエタールバンドルである。 $E_F$ では、互いに交わらない$X$ の開集合 $U,V$ に対して $U$ で $0$ 、 $V$ で $1$ を取るような断面が存在することができ、こちらの空間では断面同士を矛盾なく貼り合わせる事ができる。

層とエタールバンドル #

$\Lambda$ と $\Gamma$ の随伴 #

前節でバンドル $p:E\rightarrow X$ から層 $\Gamma_{p}:\mathcal{O}_X^{\mathrm{op}}\rightarrow\mathbf{Set}$ を作る操作と、 前層 $F: \mathcal{O}_X^{\mathrm{op}}\rightarrow\mathbf{Set}$ から、エタールバンドル$\Lambda_F:E_F\rightarrow X$ を作る操作について述べたが、実はこれらは随伴関係にある。

具体的には、 位相空間と連続写像のなす圏を $\mathbf{Top}$ と書き、位相空間 $X$ 上の前層の圏を $\mathbf{PSh}(X)$ と書くと、随伴関係

$$\xymatrix{ \mathbf{PSh}(X) \ar@/^4pt/[r]^{\Lambda}_{}="x" & \mathbf{Top}/X \ar@/^4pt/[l]^{\Gamma}_{}="y" \ar@{}|{\perp} "x";"y" }$$

が成り立つ。ここで $\mathbf{Top}/X$ はスライス圏である。本節ではこれを示す。

定義4.13: スライスカテゴリ

圏 $\mathcal{C}$ とその対象 $a$ について、$\mathcal{C}$ の $a$ に向かう射 $x\rightarrow a$ を対象とし、 以下が可換となる射 $f:x\rightarrow y$ を、 $x\rightarrow a$ から $y\rightarrow a$ への射とする圏を スライス圏(slice category) といい $\mathcal{C}/a$ と書く。 $$\xymatrix{ x \ar[rd] \ar[rr]^{f} & & y\ar[ld] \\ & a & \\ }$$

まずは $\Gamma$ 及び $\Lambda$ が関手である事を示す。対象の対応はすでに述べたとおりであるので射の対応を定める必要がある。

定義4.14: 関手 $\Gamma$

$\mathbf{Top}/X$ の対象 $p: A\rightarrow X$ に関手 $\Gamma_p \in \mathbf{PSh}(X)$ を対応させ、 射$ f: (A\xrightarrow{p}X) \rightarrow (B\xrightarrow{q}X) $ に$U\in\mathcal{O}_X^{\mathrm{op}}$ 成分が

$$ \Gamma_f(U): \Gamma_p(U)\ni s \longmapsto f\circ s \in\Gamma_q(U)$$

で定まる自然変換 $\Gamma_f: \Gamma_p\rightarrow\Gamma_q$ を対応させる対応は関手 $\Gamma:\mathbf{Top}/X\rightarrow\mathbf{PSh}(X)$ となる。

複雑に見えるが、以下の図のように非常にシンプルである。

$\Gamma_f$ が自然変換となるのは、以下の図式が可換となることから分かる。 $\Gamma$ の関手性も明らか。

$$\xymatrix{ \Gamma_p(U) \ar[r]^{f\circ -} \ar[d]_{\rho^U_V} & \Gamma_q(U) \ar[d]^{\rho^U_V} \\ \Gamma_p(V) \ar[r]^{f\circ -} & \Gamma_q(V) }$$

定義4.15: 関手 $\Lambda$

$\mathbf{PSh}(X)$ の対象 $F$ に $F$ の芽のバンドル $(\Lambda_F:E_F\rightarrow X)\in\mathbf{Top}/X$ を対応させ、 自然変換 $\theta: F\rightarrow G$ に、以下の写像 (これは $x$ の開近傍 $U$ 及び切断 $s\in F(U)$ の選び方によらずwell-definedである) $$ \Lambda_{\theta}: E_F \ni s_x \mapsto \theta_U(s)_x \in E_G $$ を対応させる対応は関手 $\Lambda:\mathbf{PSh}(X)\rightarrow\mathbf{Top}/X$ となる。

証明

$x$ の開近傍 $U,V$ と切断 $s\in F(U), t\in F(V)$ に対して $s_x = t_x$ であるとする。この時、 $x$ の開近傍 $W\subseteq U\cap V$ が存在して $s|_W = t|_W$ である。 ここで $\theta: F\rightarrow G$ は自然変換であるから、以下の図式が可換となる。 $$\xymatrix{ F(U) \ar[d]_{\rho^U_W} \ar[r]^{\theta_U} & G(U) \ar[d]^{\rho^U_W} \\ F(W) \ar[r]^{\theta_W} & G(W) }$$ 従って $ \theta_U(s)|_W = \theta_W(s|_W) $である。同様に $\theta_V(t)|_W = \theta_W(t|_W)$ であるので $s|_W = t|_W$ より $$ \theta_U(s)|_W = \theta_V(t)|_W$$ である。よって $\theta_U(s)_x = \theta_V(t)_x$ であるので、写像 $\Lambda_{\theta}$ は $U$ 及び $s$ の選び方に寄らずwell-definedである。 $\Lambda_F = \Lambda_G\circ \Lambda_{\theta}$ である事は簡単に分かるので $\Lambda_{\theta}$ は 射 $\Lambda_F\rightarrow\Lambda_G$ である。 $\Lambda$ の関手性は明らか。 $\square$

さて、 $\Lambda$ と $\Gamma$ が随伴である事を示す為に、まず以下の命題を示す。

命題4.16

位相空間 $X$ 上の前層 $F$, $X$ の開集合 $U$、切断 $s\in F(U)$ について、写像 $$\sigma_s: U\ni x \mapsto s_x\in E_F$$ は連続である。また $\sigma_s$ は $\Lambda_F$ の断面である。

証明

$E_F$ の任意の開基の元 $t(V)$ に対して $\sigma_s^{-1}(t(V))$ が $X$ の開集合であることを示せばよい。 $$ x \in \sigma_s^{-1}(t(V)) \Leftrightarrow x\in U\cap V, s_x = t_x \Leftrightarrow \text{$x$ の開近傍 $W\subseteq U\cap V$が存在して} s|_W = t|_W$$ であるから $$ \sigma_s^{-1}(t(V)) = \bigcup_{W\subseteq U\cap V, s|_W = t|_W} W$$ と表せる。これは $X$ の開集合の合併であるから開集合である。断面であるのは明らか。 $\square$

定理4.17: $\Lambda$ と $\Gamma$ の随伴関係

$$ \Lambda \dashv \Gamma$$

以下、証明を書くが、かなり高階になってきたので、簡単に復元できる情報の記載を省いた略記を積極的に用いる。

証明

関手 $F\in\mathbf{PSh}(X)$ とバンドル $(p:A\rightarrow X)\in\mathbf{Top}/X$ に対して、自然な同型 $$(\mathbf{Top}/X)(\Lambda_F, p) \cong (\mathbf{PSh}(X))(F, \Gamma_p)$$ が存在する事を示せば良い。

(左から右への写像)

左辺から右辺への対応を $$ \phi: (f:\Lambda_F\rightarrow p) \mapsto \{F(U)\ni s\mapsto f\circ\sigma_s \in\Gamma_p(U)\}_{U\in\mathcal{O}_X}$$ と定める。これが正しく写像である事を確認する。

まず、 $f$ は以下が可換となる連続写像であったから、任意の $s_x\in E_F, s\in F(U)$ に対して $p\circ f(s_x) = x$ である。 $$\xymatrix{ E_F \ar[r]^{f} \ar[rd]_{\Lambda_F} & A \ar[d]^{p}\\ & X }$$ この時 $\sigma_s: U\rightarrow E_F$ であったから $f\circ\sigma_s: U\rightarrow A$ であって、任意の $x\in U$ に対して $$ p\circ (f\circ\sigma_s)(x) = p\circ f(s_x) = x $$ となるので $p\circ(f\circ\sigma_s): U\rightarrow X$ は包含写像。従って $f\circ\sigma_s\in\Gamma_p(U)$ である。

続いて $\phi(f)$ が自然変換 $F\rightarrow\Gamma_p$ となることを確認する。以下の可換図式において任意の $s\in F(U)$ に対して時計回りに辿ると $ (f\circ\sigma_s)|_V$ 反時計回りに辿ると $ f\circ\sigma_{s|_V} $ $$\xymatrix{ F(U) \ar[d]_{\rho^U_V} \ar[r]^{\phi(f)_U} & \Gamma_p(U) \ar[d]^{\rho^U_V} \\ F(V) \ar[r]^{\phi(f)_V} & \Gamma_p(V) }$$ ここで $x \in V$ に対して $ (f\circ\sigma_s)|_V(x) = f(s_x), \quad (f\circ\sigma_{s|_V})(x) = f((s|_V)_x) $ であるが $s_x = (s|_V)_x$ であるので これらは等しい。従って、上の図式は可換であり $\phi(f)$ は自然変換 $F\rightarrow\Gamma_p$ である。 以上より $\phi$ は正しく左辺から右辺への写像である。

(右から左への写像)

右辺から左辺への対応を $x$ の開近傍 $U$、 切断 $s\in F(U)$ を用いて $$ \psi: (\theta:F\rightarrow\Gamma_p)\mapsto (E_F\ni s_x \mapsto \theta_U(s)(x) \in A)$$ と定める。これが正しく写像である事を示す。

まず 関手 $\Lambda$ の証明で述べた様に $\theta_U(s)$ は $U$ と $s$ の選び方に寄らずwell-definedである。 また、 $\theta_U:F(U)\rightarrow \Gamma_p(U)$ であるので $\theta_U(s) \in\Gamma_p(U)$ すなわち $\theta_U(s)$ は $p$ の断面 $U\rightarrow A$ であるので $\theta_U(s)(x) \in A$ である。

続いて写像 $h: E_F\ni s_x \mapsto \theta_U(s)(x) \in A$ が連続写像である事を示す。その為には、 $E_F$ の任意の開基の元 $s(U)$ に対して $ h|_{s(U)}: s(U) \rightarrow A$ が連続である事を示せば十分である。ここで

$$ h|_{s(U)}(s_x) = \theta_U(s)(x) = \theta_U(s)\circ \Lambda_F|_{s(U)}(s_x) $$

であり、 $\Lambda_F|_{s(U)}$ は連続写像 $\Lambda_F:E_F\rightarrow X$ の制限であるので連続。また $\theta_U(s)\in\Gamma_p(U)$ なのでこれも連続。 従って、これらの合成である $h|_{s(U)}$ も連続である。

(全単射であること)

続いて任意の $f:\Lambda_F\rightarrow p$ と $s_x\in E_f$ に対して $$ \psi\circ\phi(f) = \psi\left(\{s\mapsto f\circ\sigma_s\}_U\right) = (s_x \mapsto f\circ\sigma_s(x)) = (s_x \mapsto f(s_x)) = f $$ であり、任意の $\theta:F\rightarrow\Gamma_p$ に対して $$ \begin{align*} \phi\circ\psi(\theta) &= \phi\left(s_x\mapsto\theta_U(s)(x)\right) \\ &= \{t\mapsto ((s_x \mapsto \theta_U(s)(x))\circ\sigma_t)\}_V \\ &= \{t\mapsto (x\mapsto ((s_x \mapsto \theta_U(s)(x))\circ\sigma_t)(x))\}_V \\ &= \{t\mapsto (x\mapsto (s_x \mapsto \theta_U(s)(x))(t_x))\}_V \\ &= \{t\mapsto (x\mapsto \theta_V(t)(x)\}_V \\ &= \{t\mapsto \theta_V(t)\}_V \\ &= \{\theta_V\}_V \\ &= \theta \end{align*} $$ であるので $\phi, \psi$ は全単射である。

(自然性)

関手 $F,G\in\mathbf{PSh}(X)$ と自然変換 $\xi: G\rightarrow F$ 及び、 バンドル $(p:A\rightarrow X), (q: B\rightarrow X) \in \mathbf{Top}/X$ 及び、射 $f:p\rightarrow q$ に対して、以下が可換である事を示せば良い。

$$\xymatrix{ (\mathbf{Top}/X)(\Lambda_F, p) \ar[r]^{\phi} \ar[d]_{(\mathbf{Top}/X)(\Lambda_{\xi}, f)} & (\mathbf{PSh}(X))(F, \Gamma_p) \ar[d]^{(\mathbf{PSh}(X))(\xi, \Gamma_f)}\\ (\mathbf{Top}/X)(\Lambda_G, q) \ar[r]^{\phi} & (\mathbf{PSh}(X))(G, \Gamma_q) }$$

左上に $h:\Lambda_F \rightarrow p$ を取り、時計回りに辿ると

$$\Gamma_{f}\circ\{ s \mapsto h\circ\sigma_s \}_U\circ\xi = \{ s \mapsto f\circ h\circ\sigma_{\xi_U(s)} \}_U $$

反時計回りに辿ると

$$ \phi(f\circ h\circ\Lambda_{\xi}) = \{s\mapsto f\circ h\circ\Lambda_{\xi}\circ\sigma_s\}_U $$

という自然変換 $G\rightarrow\Gamma_q$ を得る。ここで任意の$X$の開集合 $U$、切断 $t\in G(U)$、 $x\in U$ に対して $$ (s \mapsto f\circ h\circ\sigma_{\xi_U(s)})(t)(x) = f\circ h\circ\sigma_{\xi_U(t)}(x) = f\circ h\left(\xi_U(t)_x\right) $$ $$ (s\mapsto f\circ h\circ\Lambda_{\xi}\circ\sigma_s)(t)(x) = f\circ h\circ\Lambda_{\xi}(t_x) = f\circ h\left(\xi_U(t)_x\right) $$ であるから、先ほどの図式は可換。

以上。 $\square$

随伴 $\Lambda\dashv\Gamma$ の単位射と余単位射がどのようなものであるか調べる。 まず、単位射 $\eta:1_{\mathbf{PSh}(X)}\rightarrow\Gamma_{\Lambda_{(-)}}$ の $F$ 成分 $\eta_F: F\rightarrow\Gamma_{\Lambda_F}$ は

$$(\mathbf{Top}/X)(\Lambda_F, p) \cong (\mathbf{PSh}(X))(F, \Gamma_p)$$

に $p=\Lambda_F$ を代入して得られる自然同型

$$(\mathbf{Top}/X)(\Lambda_F, \Lambda_F) \cong (\mathbf{PSh}(X))(F, \Gamma_{\Lambda_F})$$

において左辺の恒等射に対応する右辺の射であるから

$$ \eta_F = \phi\left(1_{\Lambda_F}\right)=\sigma_{(-)}$$

という自然変換である。すなわち、この単位射は任意の切断 $s\in F(U)$ を断面 $\sigma_s: U\rightarrow E_F$ に移すものである。

同様に、余単位射 $\epsilon: \Lambda_{\Gamma_{(-)}}\rightarrow 1_{\mathbf{Top}/X}$ の $p:A\rightarrow X$ 成分は

$$(\mathbf{Top}/X)(\Lambda_{\Gamma_p}, p) \cong (\mathbf{PSh}(X))(\Gamma_p, \Gamma_p)$$

の右辺の恒等射に対応する左辺の射であるから

$$ \epsilon_p = \psi\left(1_{\Gamma_p}\right) = (s_x \mapsto s(x))$$

すなわち、 $\Lambda_{\Gamma_p}$ の芽 $s_x$ を点 $s(x)$ に移すものである。

層とエタールバンドル #

$\Lambda,\Gamma$ により、位相空間 $X$ 上の前層の圏と、$X$ を底空間とするバンドルの圏の間に随伴関係がある事が分かったが、 層の圏と、エタールバンドルの圏に限ればこれらは同値である。すなわち、層の圏とエタールバンドルの圏は実質的に同じものである。

また、 $\Lambda,\Gamma$ がその圏同値を与える。従って、圏同値の性質として $\Lambda,\Gamma$ は本質的全射であるから、

  • 任意の層 $F$ について、あるエタールバンドル $p$ が存在して $F\cong \Gamma_p$
  • 任意のエタールバンドル $p$ について、ある層 $F$ が存在して $p\cong \Lambda_F$

である。つまり、前層 $F$ が貼り合わせの公理を満たすということと、バンドル $p$ が局所同相であるということが同じ事を言っているという事がわかる。

定理4.18

$X$ を位相空間とする。

  • $\mathbf{Top}/X$ の対象をエタールバンドルのみに制限した充満部分圏 $\mathbf{Etale}(X)$
  • $\mathbf{PSh}(X)$ の対象を層のみに制限した充満部分圏 $\mathbf{Sh}(X)$

について $\Lambda,\Gamma$ をこれらに制限したものは圏同値であり $$ \mathbf{Etale}(X) \simeq \mathbf{Sh}(X) $$

証明

$X$ を位相空間とする。 定義4.6 より、任意のバンドル $p$ に対して $\Gamma_p$ は層であるので $\Gamma:\mathbf{Top}/X\rightarrow\mathbf{PSh}(X)$ を $\mathbf{Etale}(X)$ に制限したものは、 関手 $\Gamma:\mathbf{Etale}(X)\rightarrow\mathbf{Sh}(X)$ となる。

同様に、 命題4.12 より、任意の前層 $F$ に対して $\Lambda_F$ はエタールバンドルであるので $\Lambda:\mathbf{PSh}(X)\rightarrow\mathbf{Top}/X$ を $\mathbf{Sh}(X)$ に制限したものは、 関手 $\Lambda:\mathbf{Sh}(X)\rightarrow\mathbf{Etale}(X)$ となる。

($\Gamma\Lambda\cong 1_{\mathbf{Sh}(X)}$の証明)

随伴の $\Lambda\dashv\Gamma$ の単位射 $\eta: 1_{\mathbf{Sh}(X)}\rightarrow\Gamma\Lambda$ が同型であることを示す。 すなわち、任意の層 $F$ に対して自然変換 $\eta_F: F\rightarrow\Gamma_{\Lambda_F}$ の各成分が同型射であること、 すなわち、任意の$X$ の開集合 $U$ に対して $(\eta_F)_U: F(U)\rightarrow\Gamma_{\Lambda_F}(U)$ が全単射であることを示す。

上で説明したように、切断 $s\in F(U)$ に対して $(\eta_F)_U(s) = \sigma_s$ である。まず、これが全射であることを示す。 $f\in\Gamma_{\Lambda_F}(U)$ とすると、 これは連続写像 $f:U\rightarrow E_F$ であって $\Lambda_F\circ f:U\rightarrow X$ が包含写像となるようなものである。

この時 $f(U)$ は $E_F$ の開集合であることに注意する。何故ならば、 $\Lambda_F$ が局所同相であることより、任意の $x\in U$ において、十分小さい開近傍 $x\in V\subseteq U$ を取ると $f|_V: V\rightarrow f(V)$ は同相写像となる。同相写像は開集合を開集合に移すから $f(V)$ は $E_F$ の開集合である。 従って、これらの合併である $f(U)$ も $E_F$ の開集合である。すなわち、 $f(U)$ は $E_F$ の開基の元の合併として表せる。 $$ f(U) = \bigcup_{\lambda\in L,V_{\lambda}\subseteq U, s_{\lambda}\in F(V_{\lambda})} s_{\lambda}(V_{\lambda}) $$ ここで、任意の $x\in V_{\alpha}\cap V_{\beta}\quad (\alpha,\beta\in L)$ について $(s_{\alpha})_x = (s_{\beta})_x = f(x)$ であるから $s_{\alpha}|_{V_{\alpha}\cap V_{\beta}} = s_{\beta}|_{V_{\alpha}\cap V_{\beta}}$。従って $F$ が層である事より、 $s_{\lambda}$ を貼り合わせた $s\in F(U)$ が一意に存在する。よって $ f(x) = s_x$ すなわち $f=\sigma_s$ と表す事ができるので $(\eta_F)_U(s) = f$。すなわち、$(\eta_F)_U$ は全射である。

また、$s,t\in F(U)$ に対して $$(\eta_F)_U(s) = (\eta_F)_U(t) \Rightarrow \sigma_s = \sigma_t \Rightarrow \forall x\in U. s_x = t_x \Rightarrow s=t$$ であるので $(\eta_F)_U$ は単射である。

($\Lambda\Gamma\cong 1_{\mathbf{Etale}(X)}$の証明)

随伴の $\Lambda\dashv\Gamma$ の余単位射 $\epsilon: \Lambda\Gamma\rightarrow 1_{\mathbf{Etale}(X)}$ が同型であることを示す。 すなわち、任意のエタールバンドル $p:A\rightarrow X$ に対して、 $\epsilon_p: \Lambda_{\Gamma_p} \rightarrow p$ が同型であること、 すなわち、$\epsilon_p: E_{\Gamma_p}\rightarrow A$ が同相写像であることを示す。 $\epsilon_p$ の連続性は定義より明らかなので、$\epsilon_p$ が全単射であることと $\epsilon_p^{-1}$ が連続である事を示ば良い。

上で説明したように、芽 $s_x\in E_{\Gamma_p}\ (x\in U, s\in \Gamma_p(U))$ に対して $\epsilon_p(s_x) = s(x)$ である。また $s:U\rightarrow A$ は $p$ の断面だから $p(s(x)) = x$ である。

任意の $y\in A$ に対して $p$ はエタールであるから $y$ の開近傍 $V$ で $p|_V$ が同相写像であるようなものが存在。ここで $U=p(V), x=p(y)$ と置く。 $(p|_V)^{-1}: U\rightarrow A$ は $p$ の断面だから $(p|_V)^{-1}\in\Gamma_p(U)$。この時 $$ \epsilon_p\left((p|_V)^{-1}_x\right) = (p|_V)^{-1}(x) = y$$ となる。よって $\epsilon_p$ は全射。

また、芽 $s_x, t_y\ (x\in U, s\in \Gamma_p(U), y\in V, t\in\Gamma_p(V))$ について$\epsilon_p(s_x) = \epsilon_p(t_y)$であるとすると $s(x)=t(y)\Rightarrow p\circ s(x)=p\circ t(y) \Rightarrow x = y$ である。続いて $s_x, t_x$ の一致を示す。 $p$ はエタールであるから、 $s(x)=t(x)$ の十分小さな開近傍 $W\subseteq A$ を取ると $p|_W$ は同相写像。 $s,t$ は連続写像であるので十分小さな $x$ の開近傍 $W’$ を取ると $s(W’)\subseteq W, t(W’)\subseteq W$ となるようにできる。 $s,t$ は $p$ の断面であるので、任意の $x’\in W’$ について $p\circ s(x’) = p\circ t(x’)$ であるが $p|_W$ が同相であることから $s(x’)=t(x’)$ である。 従って $s_{W’}=t_{W’}$ であるので $s_x = t_x$ となる。よって $\epsilon_p$ は単射。

最後に、任意の $E_{\Gamma_p}$ の開基 $s(U)$ に対して $$ \epsilon_p(s(U)) = \{s(x) | x\in U\} = s(U)$$ である。 $p$ が局所同相であることより、その断面 $s$ も局所同相であるから $s(U)$ は $A$ の開集合。よって $\epsilon_p^{-1}$ も連続。

以上より $$ \mathbf{Etale}(X) \simeq \mathbf{Sh}(X) $$ である。 $\square$

層の圏 #

層化関手 #

任意の前層 $F$ から 層$\Gamma_{\Lambda_F}$ を得ることができるが、これを $F$ の 層化(associated sheaf) と呼ぶ。 これは以下の意味で、 $F$ から作れる層の中で最も普遍的なものである。また、関手 $\Gamma\Lambda:\mathbf{PSh}(X)\rightarrow\mathbf{PSh}(X)$ を 層化関手(associated sheaf functor) と呼ぶ。

命題4.19

$F$ を前層とする。 任意の層 $G$ と自然変換 $\theta: F\rightarrow G$ に対して、以下が可換となる自然変換 $\phi: \Gamma_{\Lambda_F}\rightarrow G$ が唯一つ存在する。

$$\xymatrix{ F \ar[d]_{\eta_F} \ar[rd]^{\theta} & \\ \Gamma_{\Lambda_F} \ar@{.>}[r]^{\exists!\phi} & G }$$

証明

自然変換 $\theta: F\rightarrow G$ より $\Gamma_{\Lambda_{\theta}}: \Gamma_{\Lambda_F} \rightarrow \Gamma_{\Lambda_G}$ を得る。ここで $G$ は層であるから $\eta_G: G\rightarrow\Gamma_{\Lambda_G}$ は同型射なので $\eta_G^{-1}$ が存在し、 $$\phi = \eta_G^{-1}\circ\Gamma_{\Lambda_{\theta}}$$ という射$\Gamma_{\Lambda_F}\rightarrow G$ が存在する。この時、任意の切断 $s\in F(U)$ について

$$ (\phi\circ\eta_F)_U(s) = \phi_U(\sigma_s = (\eta_G^{-1}\circ\Gamma_{\Lambda_{\theta}})_U(\sigma_s) = (\eta_G^{-1})_U(\Lambda_{\theta}\circ\sigma_s) = (\eta_G^{-1})_U(x\mapsto \theta_U(s)_x) = \theta_U(s) $$ である。従って $\phi\circ\eta_F = \theta$である。

ここで $\phi:\Gamma_{\Lambda_F}\rightarrow G$ が $\phi\circ\eta_F = \theta$ を満たすとする。 $f\in\Gamma_{\Lambda_F}(U)$ とすると、これは $\Lambda_F$ の断面 $f: U\rightarrow E_F$ であるが、 $\Lambda_F:E_F\rightarrow X$ は局所同相であるので、 $f$ も局所同相。すると $f(U)$ は開集合であるので、適当な開基の元の合併 $$ f(U) = \bigcup_{\lambda} s_{\lambda}(U_{\lambda})\quad (s_{\lambda}\in F(U_{\lambda})$$ で表せる。この $f(U)$ の開被覆を十分細かくとれば、任意の $\lambda$ に対して $ p|_{s_{\lambda}(U_{\lambda})}: s_{\lambda}(U_{\lambda}) \rightarrow U_{\lambda}$ は同相写像であって $(p|_{s_{\lambda}(U_{\lambda})})\circ f|_{U_{\lambda}}$ は恒等写像であるので $ f|_{U_{\lambda}} = (p|_{s_{\lambda}(U_{\lambda})})^{-1} = \sigma_{s_{\lambda}} $ である。

ここで $(\phi\circ\eta_F)_{U_{\lambda}} = \theta_{U_{\lambda}}$ に $s_{\lambda}$ を代入すると $\phi_{U_{\lambda}}(\sigma_{s_{\lambda}}) = \theta_{U_{\lambda}}(s_{\lambda})$ であり、 $\phi$ は自然変換であるので $$\phi(f)|_{U_{\lambda}} = \phi_{U_{\lambda}}(f|_{U_{\lambda}}) = \theta_{U_{\lambda}}(s_{\lambda})$$ である。従って、任意の $\alpha,\beta$ に対して $$ (\theta_{U_{\alpha}}(s_{\alpha}))|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}} = (\theta_{U_{\beta}}(s_{\beta}))|_{U_{\beta}\cap U_{\beta}} = \phi(f)|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}} $$

である。よって $G$ は層であるから $\{\theta_{U_{\lambda}}(s_{\lambda})\}$ を貼り合わせた切断 $t\in G(U)$ が一意に存在する。よって任意の $\lambda$ で $$\phi(f)|_{U_{\lambda}} = \theta_{U_{\lambda}}(s_{\lambda}) = t|_{U_{\lambda}}$$ であるから $\phi(f) = t$ である。従って、このような $\phi$ は唯一つに定まる。 $\square$

命題4.20

$i: \mathbf{Sh}(X)\rightarrow\mathbf{PSh}(X)$ を包含関手とすると $$ \Gamma\Lambda \dashv i $$ である。

これは $\theta: F\rightarrow i(G)$ と $\phi:\Gamma_{\Lambda_F}\rightarrow G$ が一対一に対応することから分かる。自然性も簡単に示せるので証明は省略する。

極限と余極限 #

前層の圏と同様に層の圏も双完備となる。すなわち、任意の小さな極限と余極限が存在する。但し、極限と余極限で状況は異なる。 以後、どの圏での極限か分かるように $\lim$ の上に圏を表記する記法を用いる。

命題4.21

$\mathbf{Sh}(X)$ での小さな極限は常に存在し、 $\mathbf{PSh}(X)$ で求めた極限と一致する。 $$ i\left(\overset{\scriptsize\mathbf{Sh}(X)}{\varprojlim_{j\in J}} F_j\right) \cong \overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varprojlim_{j\in J}} i(F_j)$$ である。 一方、$\mathbf{Sh}(X)$ での小さな余極限も常に存在するが、 $$ \overset{\scriptsize\mathbf{Sh}(X)}{\varinjlim_{j\in J}} F_j \cong \Gamma\Lambda\left(\overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varinjlim_{j\in J}} i(F_j)\right)$$ である。

証明

まず $\mathbf{PSh}(X)$ の圏は双完備であることに注意する。

(極限の存在)

$J$ を小圏とする。 $F_j\ (j\in J)$ は層であるので、 $\mathcal{O}_X^{\mathrm{op}}$ の任意の余完備充満部分圏 $K$ に対して $$\begin{align*} \overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varprojlim_{j\in J}}i(F_j)\left(\varprojlim_{U_k\in K}U_k\right) & \cong \overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varprojlim_{j\in J}}\varprojlim_{U_k\in K} i(F_j)(U_k) (\because\text{ 位相空間上の層(連続性利用) })\\ & \cong \varprojlim_{U_k\in K}\overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varprojlim_{j\in J}}i(F_j)(U_k) (\because\text{極限は交換できる}) \\ \end{align*}$$ が成り立つ。ここで、極限は対角関手の右随伴( 極限に関する随伴 )であり、右随伴は極限を保存することから、極限の交換が可能である事を利用している。 従って、再び 位相空間上の層(連続性利用) より $\overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varprojlim_{j\in J}}i(F_j)$ は層である。 よって $\mathbf{Sh}(X)$ が $\mathbf{PSh}(X)$ の充満部分圏であることより

$$ i\left(\overset{\scriptsize\mathbf{Sh}(X)}{\varprojlim_{j\in J}} F_j\right) \cong \overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varprojlim_{j\in J}} i(F_j)$$ である。

(余極限の存在)

$J$ を小圏とする。任意の $\{i(F_j)\}$ を底とする錐 $\{i(F_j)\rightarrow G\}$ に対して、以下が可換となる 射 $\overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varinjlim_{j\in J}} i(F_j) \rightarrow i(G)$ が唯一つ存在する。 $$\xymatrix{ \overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varinjlim_{j\in J}} i(F_j) \ar@{.>}[r]^-{\exists!} & i(G)\\ i(F_j) \ar[u] \ar[ur] }$$

この全体を $\Gamma\Lambda$ で $\mathbf{Sh}(X)$ に移すと、層 $G$ に対しては $\Gamma\Lambda(G)\cong G$ であるから、 $\mathbf{Sh}(X)$ における $\{F_j\}$ とする錐の圏の射が得られる。

$$\xymatrix{ \Gamma\Lambda\left(\overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varinjlim_{j\in J}} i(F_j)\right) \ar@{.>}[r]^-{\exists u} & G\\ F_j \ar[u] \ar[ur] }$$

ここで $\Gamma\Lambda\dashv i$ であるから、自然な同型 $$ \mathbf{Sh}(X)(\Gamma\Lambda(H), G) \cong \mathbf{PSh}(X)(H, i(G))$$ が存在する。よって $u$ が一意であることが分かるから $\Gamma\Lambda\left(\overset{\scriptsize\mathbf{PSh}(X)}{\varinjlim_{j\in J}} i(F_j)\right)$ が $\mathbf{Sh}(X)$ における余極限であることが示された。 $\square$

点・開集合と層の関係 #

これまでは位相空間 $X$ の上の層というものを考えてきたが、次章以降は"位相空間の上"という部分も抽象化を進めていく。 そこで、事前の準備として位相空間の点 $x\in X$ 及び開集合 $U\in\mathcal{O}_X$ という概念と、層の概念の関係を調べていく。

定義4.22: 摩天楼層

$A$ を集合とする。 $X$ を位相空間、 $x\in X$ とする。 $1=\{\ast\}$ を一点集合として、各 $X$ の開集合 $U$ に対して

$$\mathrm{Sky}_x(A)(U) = \begin{cases} A & (x \in U) \\ 1 & (x \not\in U) \end{cases} $$

と定め、制限写像を自明に定めると $\mathrm{Sky}_x(A)$ は層となる。 これを $A$ の $x$ における 摩天楼層(skyscraper sheaf) という。

また、$\mathrm{Sky}_x(f)$ を写像$f:A\rightarrow B$ を、 $a\in A$ を $f(a)\in B$に、 $\ast$ を $\ast$ に 移す自然変換とすると $\mathrm{Sky}_x$ は関手 $\mathbf{Set}\rightarrow\mathbf{Sh}(X)$ となる。これを 摩天楼関手(skyscraper functor) という。

$\mathrm{Sky}_x(A)$ が層である事や、 $\mathrm{Sky}_x$ の関手性は明らかなので証明は省略する。

命題4.23

層を $x$ 上の茎に移す関手 $\mathrm{Stalk}_x:\mathbf{Sh}(X)\rightarrow\mathbf{Set}$ について $$ \mathrm{Stalk}_x\dashv\mathrm{Sky}_x $$

厳密な証明は単純な上に場合分けが頻出して面倒なので省くが、以下のように理解する事ができる。

この随伴は、層$F$ と集合 $A$ に関して自然な同型 $$\mathbf{Set}(\mathrm{Stalk}_x(F), A) \cong \mathbf{Sh}(X)(F,\mathrm{Sky}_x(A))$$ が存在するという事を言っている。ここで

$$ \mathbf{Set}(\mathrm{Stalk}_x(F), A) \cong\mathbf{Set}(\varinjlim_{x\in U}F(U), A) \cong \varprojlim_{x\in U}\mathbf{Set}(F(U), A) $$

であるから、先ほどの同型は以下のように書き直せる。

$$\varprojlim_{x\in U}\mathbf{Set}(F(U), A) \cong \mathbf{Sh}(X)(F,\mathrm{Sky}_x(A))$$

自然変換 $F\rightarrow\mathrm{Sky}_x(A)$ は $x\in U$ の時には$F(U)\rightarrow A$ という写像であり、 $x\not\in U$ の時には一点に潰す情報を持たない写像 $F(U)\rightarrow 1$ であるので、この両辺共に写像の族 $\{F(U)\rightarrow A\}_{x\in U}$ のみの情報から構成されているという事が分かる。

定義4.24: 部分層

層 $F$ の部分関手 $G$ (すなわち、モノ射 $G\xhookrightarrow{} F$ が存在する $G$) であって、層であるものを $F$ の 部分層(subsheaf) という。

命題4.25

層 $F$ の部分関手 $G$ が層であることは、以下と同値。

任意の断面 $s\in F(U)$ と開被覆 $U=\bigcup_{\lambda}U_{\lambda}$ に対して $$ s\in G(U) \Leftrightarrow \forall\lambda. s|_{U_{\lambda}}\in G(U_{\lambda})$$ が成り立つ。

証明

$G$ を層 $F$ の部分関手であるとする。

(必要性)

$G$ が層であるとする。 $ s\in G(U) \Rightarrow \forall\lambda. s|_{U_{\lambda}}\in G(U_{\lambda})$ は明らか。$\forall\lambda. s|_{U_{\lambda}}\in G(U_{\lambda})$ であるとすると、$G$ は層であるから これらを貼り合わせた切断 $t\in G(U)$ が存在する。 ここで $G(U)\subseteq F(U)$ の部分集合であるから $t\in F(U)$ であるので、貼り合わせの一意性より $s=t$ である。

(十分性)

任意の断面 $s\in F(U)$ と開被覆 $U=\bigcup_{\lambda}U_{\lambda}$ に対して $$ s\in G(U) \Leftrightarrow \forall\lambda. s|_{U_{\lambda}}\in G(U_{\lambda})$$ が成り立つとする。

任意の開被覆$U=\bigcup_{\lambda}U_{\lambda}$ と断面 $s,t\in G(U)$ について、全ての $\lambda$ で$s|_{U_{\lambda}}=t|_{U_{lambda}}$ であるとする。 この時 $G(U)\subseteq F(U)$ であるので $F$ が層である事から $s=t$ である。

また、任意の開被覆$U=\bigcup_{\lambda}U_{\lambda}$ と切断の族 $s_{\lambda}\in G(U_{\lambda})$ について、任意の $\alpha,\beta$ で $s_{\alpha}|_{U_{\alpha}\cap U_{\beta}} = s_{\beta}|_{U_{\alpha}\cap U_{\breta}}$ であるとする。この時、これらの切断は $F(U_{\lambda})$ の元でもあるので $F$ が層であることより、ある切断 $s\in F(U)$ が存在して $s|_{U_{\lambda}} = s_{\lambda} \in G(U_{\lambda})$ である。そして、仮定した条件より $s \in G(U)$ である。

従って $G$ は貼り合わせの公理を満たすので層である。 $\square$

$\mathbf{PSh}(X)$ の終対象 $1$ は層であるので、その部分層の集合 $\mathrm{Sub}_{\mathbf{Sh}(X)}(1)$ を考える事ができるが、これが $X$ の開集合の集合と同型になる。 より具体的には、フレームという代数構造として同型である事が言えるが、その解説は後の章に回して、ここでは一対一対応のみを示す。

命題4.26

$$ \mathrm{Sub}_{\mathbf{Sh}(X)}(1) \cong \mathcal{O}_X $$

証明

$1$ の部分層 $F \xhookrightarrow{} 1$ の$U$ 成分は $F(U)\subseteq 1\quad(\text{一点集合})$ を満たすので、各開集合 $U$ について $F(U)=1$ であるか $F(U)=\emptyset$ であるかのいずれかである。そこで

$$\phi(F) = \bigcup\{U \in\mathcal{O}_X \mid F(U)\neq\emptyset \}$$

とすると写像 $\phi: \mathrm{Sub}_{\mathbf{Sh}(X)}(1) \rightarrow \mathcal{O}_X $ が得られる。

また、

$$ \psi(U)(V) = \begin{cases} 1 & (V\subseteq U) \\ \emptyset & (V\not\subseteq U) \end{cases}$$

と定めると写像 $\psi: \mathcal{O}_X \rightarrow\mathrm{Sub}_{\mathbf{Sh}(X)}(1)$ が得られる。 $\phi\circ\psi = 1, \psi\circ\phi= 1$ は容易に示す事ができる。 $\square$